MXのサンプル・ギター(c.1979)

MXについては分からないことが非常に多い。生産台数が極端に少ないらしく、MRのように多くの固体を見ることがないのが原因だ。 MXは1978年のうちに展示発表があり、翌1979年中頃から市販が始まったモデルだ。 全体のコンセプトとしては、MRで評判が悪かったポイントを改良し後継機種にしようとしたのだろう。 MRを座って弾くと何とも落ち着きが悪く、人間工学デザインを導入した結果がこのボディ・シェイプらしい。開発にはかなりの力が注がれたようで、当時来日したジェフ・ベックにもプロトタイプが手渡された(ベックのオールド・ストラトのナットが割れてしまい、グレコのリペアマンが急遽呼ばれたとのことの話しがある)。ベックがMXのプロトを弾く姿はPlayer誌1979年1月号で確認できるが、その時点での仕様は TSビブラート付きのものとGOブリッジ(BR−GO)の2種だった。1979年5月のVol.10カタログにはMR・MXの双方が掲載され、MRはこれを最後にカタログから姿を消して行くことになる。左のギターは、ブリッジとテールピースが交換されてしまっているものの、市販型MXの最も初期の物である。サンプルと書いた根拠としては、このギターは木目の様子からVol.10カタログ、や広告の写真撮影に使用されたギターそのものと分かったからだ。製造番号をお知らせしたいところだが、ヘッド裏には2枚のシールが貼られており番号を確認できない。参考までにシールに記載された文字を紹介しておく。1枚は「For PR No.27」、他方は「固定資産 No.0033xx 株式会社○○商会」とはっきり読みとれる。この時期のグレコでは一部のモデルのバインディングに特徴がある。M(ミラージュ)1000のブルーメタリックに目立つ通り、真っ黄色に変色し塗装にヒビが入る材質が使われたのは残念なこと。グレコにしてはどうしたのかと気にかかる。また、3点支持のPUマウントが標準だと思われるが、Vol.13カタログのMX600では常識的なエスカッションにとってかわられた。MXのためにだけパーツを作り続けるほど、このモデルの需要がなかった証拠だろう。重量は3.7Kgとお手頃。この時期になると、グレコギターが一般的に重いとは言い切れないようだ。


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