SG−SPL風のギター
ソープバー・タイプのピックアップをエスカッションでマウントしたギターは、本家ギブソンで一般的な構造ではない。従って国産コピー群の中に見かけることが殆どないだろう。もちろんグレコでも、画像のようなギターは他にない。しかもこのエスカッションは、ミニハムバッカー用とサイズが全く異なる。エスカッションのようなプラスチック部品を作るのには「金型」が必要で、これは決して安価なものではない。ワンオフのギター用に製作していては不合理があまりにも大きい。そこで同じピックアップ型式を当時の資料に探すと、1970〜71年の海外向けカタログに掲載されたIbanez No.2377がある。これは1970年ごろから本家で盛んに企画された「新しいSG」のコピーらしく、黒いプラスチック製のレスポール風ピックガードと単独のコントロールパネルを持つほか、ビグスビー式トレモロやドットポジションの特徴がある。ピックアップは1973年のパーツカタログにも収録され、No.2377-60と紹介されている。1970年代前半においては、富士弦が生産するギターで国内販売用は神田商会が扱う「Greco」、輸出用が星野楽器扱いの「ibanez」の住み分けがあったが、モデル・ラインナップについては「Ibanez」の方がずっと多彩だった。1975年までのIbanezはコピーモデルばかりで、中にはグレコと殆ど同一のギターもあったが、この時代ではヘッドにブランド・ロゴの無いギターが多い。1975年途中にアーティスト系列の始祖に当たるモデルやアイスマンが登場し、1976年には全モデルがオリジナルデザインのヘッドを採用、1976年にオリジナルモデルが大量投入され、1977年になるとコピーモデルは姿を消して行く。海外では1975年ごろからコピーモデルに対し圧力がかかり始めたのが手に取るように分かる。ギブソン型ヘッドのギターを輸出しないとの方針は、1975年の内に急遽決定されたようだ。この時点で生産途中のギターが相当にあったのではないだろうか? この年のグレコには、それまでの路線と大きく異なるギターが突如多機種登場する。SG500(SG Jr.タイプ)、TV500(レスポール Jr.タイプ)、MG600(メロディーメーカー・タイプ)、LJ600(レスポール SPL.タイプ)などの廉価版モデル(しかし割高か?)が目立つほか、EG550BD(ノーバインディングでブラック&ゴールドのレスポール型)などが挙げられる。当時、これらのギターについて国内需要があったとは考えにくい。またグレコのカタログモデルでも、この年を中心に短期間だけ使われたロゴ(輪っか付き「r」)が目立つ。EG550BDについては「The Greco」ロゴの個体も市場に出回った。グネコ(Gneco)ロゴは、商標登録を機会に「Greco」のスラント・ロゴに変わって行ったが、ほぼ同時期に「輪っか」タイプが存在し、こちらは印刷物に全く使用されなかったことに注目したい。さらに問題のギターはペグ裏や指板エンドに「☆マーク」が入っている物が多い。私見となるがこれらは、輸出できなかったIbanezの化粧直しなのだろう。ヘッドのブランドロゴは元々インレイ(象嵌)ではなく「置き貝」なのでロゴの変更は容易だし、元よりロゴ無しであった可能性が高い。区別のために臨時のロゴを作ったのか、作業が通常のライン外で行われたと想像してしまう。1972年に復活したギブソンSGスペシャルは、ワイドトラベルブリッジ、黒塗装のミニハム、ドット・ポジションの仕様であった。画像のギターはレフトオーバー・パーツを利用して、この路線を狙ったものではないかと感じている。ボディは4層の合板、ネックは塗色が濃く(シースルーのダークブラウン)材質が分かりにくいが3ピースのマホガニーに見える。指板はローズでマーカーはプラスチック。重量は弦も含んで3.6kgだ。
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