T.S.ビブラートの観察

T.S.ビブラートが2種類あることは以前から広く知られている。アーム・ホルダー(アームを締め付けて保持する部品)の上部がフラットなタイプ(画像で左)が古く、ドーム状に仕上げられた方(右)が後の部品となる。これについては購入後の部品交換なども想像され、仕様変更の時期が非常に掴みにくい。外観について他の差異としては、ブリッジ・サドルのブレを防ぐ目的で作られた「溝」の長さが違うと気がついた方も多いことだろう。当時は金属の質が変わったと噂されたが、その実際のところは確かめる術もなく今日を迎えてしまった。ギターの本質に関わるとすれば、アーム・ホルダーを除いた「プレート部分」であろうと考え、「ホルダー受け」を外して画像2段目のように分解してみた。細部を凝視しても「溝の長さ」以外は見掛けに全く変化がないので、仕様の変更は金型の修正で行われたと考えられる。金属の組成が変わったのなら重量変化があるだろうと計測してみると、旧型の214グラムに対し新型は212グラム。「溝」が拡げられたことを考え合わせると、殆ど変化無しと言った結果だった。部品を切断してサンプルを取るわけにもいかず、「伝承」を知らなければ考察もここまでだろう。次にテストしたのは磁石につく力なのだが、これは双方に差はなく磁性体でないと判断された。「噂」は間違いだったのかと思いかけたものの、何となく諦めがつかない。やや祈る様な気持ちで、最後はサウンド・チェックを行ってみた。これはトライアングルのように部品を糸で吊し、叩いた音を聴き素材の変化を推測しようと言う極めて原始的な方法だ。結果としてこの方法では大きな差が確認できた。比較すると旧型は「湿った低い音」を出す。新型の方は「澄んだ高い音」で鳴り、固い金属に変更されたことが想像できる。

T.S.ビブラートは、元々ミュージックマンのギター用に開発されたと考えられる節が当時の印刷物に散見される。1978年のGOllとブローラは、発表の直前までノン・ビブラートだったようだ。GOll初期モデルを精査すると、急遽仕様変更があった影響が見えて面白い。T.S.ビブラートはグレコ・ギターに流用され、当初はフラット・トップ機限定であったが、1979年になるとアーチド・トップのギターにも搭載が始まる。「溝」の延長は、多様な機種に取り付ける柔軟性を目指したもので、材質の変更は「ミュージックマン用」から「グレコ用」に進化を遂げたと受け取っている。蛇足だが「溝」の長さはオクターブ調整のしやすさと関連が薄い。

ユニットの周辺に目を向けると、トップ側の表情はとても可愛らしい(顔にみえるような・・・)。段付き加工はボディのラミネートと関係なく、接着が全て完了した後にルーターで行われた痕跡がある。なお、このトップ側加工は各機種共通のようだが、ブローラーで比較的後期に作られたものだけに、「ホームベース型」の簡略なスタイルとなったギターが見受けられる。バックパネルを開けると、キャビティ形状とアンカー固定ボルトの本数が違うことが分かり、グレコ全般で感じる「仕様の変遷」の激しさを見せつけられる思いだ。

(旧型はA79のGOll750、新型はI79のGOll550)

T.S.ビブラート調整についての緊急情報


  

  



  




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